第5回・深川八幡祭①お神輿の掛け声「ワッショイVSソイヤ」
打倒「ソイヤ」
終わったばかりの深川八幡祭、水掛祭りとして有名なこのお祭りの、お神輿を担ぐときの掛け声は「ワッショイ」であります。近年、お神輿と言えば浅草の三社祭が断然有名になり、江戸の祭の神輿の掛け声は、浅草の「ソイヤ」だ、と思われつつあります。「ワッショイ」なんてカッコ悪い、「ソイヤ」のほうがカッコいいから、などと「間違った」認識が広まりつつあって、嘆かわしい限り、なのであります。かくして、いまや東京中のお神輿の掛け声が「ソイヤ」になりつつあります。三社祭の影響力絶大であります。
「ソイヤ」という掛け声は、もともと「ワッショイ」が訛ったもの、なのです。深川では氏子町内の範囲がとても広く、お神輿の巡航距離が長い。だから「ワッショイ」の「ワッ」で一歩、「ショイ」でまた一歩、とどんどんお神輿を前に進めていく必要があります。深川は「走り神輿」とかつて言われていたくらいです。これに対し、三社祭はお神輿の巡航距離がそんなに長くなく、お神輿が走るのではなく「練り歩く」のが特徴。だから、「ワッショイ」の掛け声で、深川のように二歩ではなく、「ワッショイ」で一歩、となった。で「ワッショイワッショイワッショイワッショイワッショイワッショイ・・・」と早口で繰り返していくうちに(まあとにかく、ご自分でやってみてください)「ワッショイ」が「ショイワ」になって最後には「ソイヤ」になったのであります。
深川も「ソイヤ」に浸食された
昭和40年代ごろ、都市化の影響、なんでしようか、深川のお神輿の掛け声も「ソイヤ」になってしまったのでした。「ワッショイ」より、浅草の「ソイヤ」のほうが粋だ、カッコイイ、と深川の人間すら思ってしまったのです。しかし、「ソイヤ」で担ぐと、お神輿が前に進まない。そうなんです。「ソイヤ」はもともと、神輿が練り歩くための掛け声なので、深川の「走り神輿」にこれを適用すると、お神輿が停滞して、長距離の巡行にものすごく時間がかかってしまうのです。そうなると、警察が困ります。だって、お神輿が通る間は道路は通行止め、警備も大変、これが「ソイヤ」のせいでお神輿が前に進まず、予定時間を大幅にオーバー、なんてことになったら、警察が怒っちゃいます。実際に、3年に一度の「本祭り」の全町会のお神輿54基が勢ぞろいして全氏子町内を渡御する「連合渡御」の際に、予定時間大幅オーバーが発生し、警察から大目玉を食らってしまったのです。
「ワッショイ」復活!!
そこで、深川のお祭りから「ソイヤ」という掛け声を追放し、「ワッショイ」で統一しよう、ということになったのです。これが昭和50年代。ホントの話です。それ以後、深川のお神輿の掛け声は「ワッショイ」で統一されました。各町会のお神輿では「ソイヤ」という掛け声を掛ける人を「厳しく指導」して、「ワッショイ」で担ぐように指導したのです。今でも深川のお神輿担ぐときに「ソイヤ」なんて言ったら、町会の人たちが飛んできますよ!!これホントです!!