江戸は元禄時代、江戸の町は、赤穂浪士が主君の仇、吉良上野介への仇討ちを果たすか、その話題でもちきりです。俳諧師・宝井其角も、赤穂浪士たちの討ち入りは今か今かとやきもきしております。そんな師走のある日、其角は両国橋で、俳諧の弟子で赤穂浪士のひとり大高源吾と行き合います。其角はぼろをまとって変装した大高源吾を憐み、こんな句を送ります。
年の瀬や水の流れと人の身は
これに対し、大高源吾は
明日待たるるその宝船
と返します。当時の俳句は、五七五の発句に七七の付け句を返してずっとつなげていくものでした。大高源吾はこの付け句の中に、明日こそ念願の討ち入りの日、とほのめかしたのです。其角は、この句の意味を解き、大喜びしたのでした。このあたりのエピソードは、歌舞伎の「松浦の太鼓」に出てきます。「松浦の太鼓」は歌舞伎座で12月によく上演される演目で、もちろん其角も登場しますよ!!
「其角せんべい」という店名は、俳句や和歌を愛した創業者がつけた名前です。なかなか「きかく」と読んでもらえないので、なかなか大変ですが、こだわりのある名前、とても気に入っています。